『勝てるデザイン』のワークがデザインの「視力」を高める

昨夏からの仕事がようやく一段落ついたので、デザインの勉強を再開。
「デザインを諦めない地方公務員」なので、以前からやってみようと思っていた前田高志さんの『勝てるデザイン』に書かれていたデザインワークを休日に実行してみました。

すると……デザインの「視力」が良くなった、とそんなお話。

デザインを採集すると、目の前にデザインが溢れてくる

『勝てるデザイン』には15のデザインワークが紹介されているんですが、今回やったのは2~4の3つのワークです。

最初は「デザインを1,000例集めろ!」というもの。

やることはシンプル、街中に溢れるデザインを撮影してPinterestで1,000件、ピン(採集)すること。

これが簡単そうに見えて、以外とそうじゃない。最初の1日目は、Web上のコンテンツも含めて100件ほどしか採集できませんでした。しかも、どれもなんだか「自分が好きそうなデザイン」ばかり。

これでは1,000件なんていつになるか分からないと思って、週末にスマホを持ってまち歩き。「これはデザインだ」と思ったら、ポスターでも看板でも、ロゴでも商品パッケージでもガンガンと撮影してPinterestに採集していきます。

そして100件ほど新たに採集したあたりから、急に目に入るデザインの「量」が変わりました。

何、街中ってこんなにデザインに溢れてたっけ?

まるで特別な眼鏡をかけたかのように、色々なデザインが目に飛び込んでくるようになりました。

さっきまでは平凡なポスターだと思ったものが、「あぁ、これはこういう意図で写真をここに配置してるんだ」「なるほど、この色とここが同じ色なんだ」と、なんとなくデザインした人の意図が少しだけ分かるようになってきます

そうやって半日ほど歩いて写真を撮って採集しても300件……おぉ、これ大変だぞ。平日は仕事があるので、休憩時間などに庁内に配架されているちらしなどをチェック、帰ったらWeb上のデザインもチェック、そんなこんなで1週間かかってようやく1,000件のデザイン採集が完了しました。

……ちなみにこのデザインワークの締切は「3日間」。すごいな、本職のデザイナーさんは、これ3日でやっちゃうのか。

好きと嫌いには理由がある

私が選んだ「ベスト10」デザイン

2つめのワークは「マイベストとマイワーストを決めろ!」というもの。

1,000例集めたデザインから自分の価値観だけでランキングをつける。とりあえず、「イイね」ってものを50、「うーん……」ってものを50ピックアップして、そのあとベスト10、ワースト10を決めることに。

無作為に集めた1,000例とはいえ、やっぱり好みがあるので集めたデザインは「イイね」と思うものが多くなっています。それに、デザイナーが仕事としてつくっている作品を「うーん……」なんて思うのは、ノンデザイナーの一公務員がちょっと生意気すぎないかという気持ちも浮かんできてなかなかピックアップできません。

おぉ、このワークも思っていた以上に大変だぞ。

それでも、なんとか50ずつピックアップしようと思うと、またデザインの「視力」あがってきます。

「ん? なんでこの場所に、この言葉があるんだ?」
「この文字見にくいなぁ。色が悪いのかな」
「あ、これ、字間調節してる?」

最初は格好良い、悪いのような基準で見ていたのに、どこがイイっ、好きなのか、どこがうーん……、これはあかんやろというのが、少しずつ頭の中に浮かんでくるようになってきます。そして、一つ一つのデザインの見方が、変わってきて、少しずつピックアップできるようになってきます。

おぉ、これは面白い。

そしてそれぞれ50ずつピックアップしたら、ベスト10、ワースト10を決めて、それぞれ「何が好きなのか、嫌いなのか」をコメントを付けていく作業に。

デザインを好き、嫌いをきちんと説明できるようになると、デザインを具体的に改善できる糸口が掴めるようになります。 多分、このワークをしたあとは、役所のちらしはガンガン修正できると思います。

私が選んだ「ワースト10」デザイン

必殺技だから繰り出したくなる

3つめのワークは「デザインの必殺技を10個作れ!」

1つめ、2つめのワークで集めたデザインから、そのデザインの肝になるテクニック「すべらないデザイン」を、必殺技として収集するもの。

同じくベスト10を決めるのですが、このワークはまだ完遂していません。
notionに「デザインの必殺技」を収集するデータベースを作ったので、そこに10個と言わず、気がついたらドンドンと追加するつもり。

格好いい必殺技は単なるデザインのストックとは明らかに違う価値が生まれます
必殺技にすることで、その必殺技を繰り出したくなるんですよね。そして、その必殺技を「カッコええ」と見ているのではなく、自分が繰り出すためにきちんと練習して会得するところまで持っていくことができます。

今回のワークでベスト10にピックアップした中から、とりあえずこんな必殺技3つを考えました。
必殺技名をつけようとすると完治したかに思えた厨二病が発病しますね……いやぁ、面白い。 自分で命名するから、きちんと頭の中に必殺技が定着するんですね。

天逆自在

技法対象物を上下逆さまに配置する

効果強烈な違和感で目を引きつけ、対象物を意味も逆転させてデザインに意図を持たせる

阿蘇山の吹き上げる火山灰を逆に「振ってこい」、東京タワーが突き上げる空を「水族館の水」に。このポスターは絶対に目がいっちゃう。 通天閣、あべのハルカスのような高い建物だけじゃなく、町並みを逆転させることで表現できるものが広がりそう。

ライトインシャドウ

技法黒背景に白、橙(金)の文字を配置する

効果白い文字をメインカラー、橙をサブカラーとして配置することで白のメッセージに強烈に引きつけられ、その後橙の言葉を読もうという気になる。

NHK「ラジオ深夜便」のコーナーをまとめた書籍デザイン。2冊目は赤バックの黒文字ですが、1冊目のこのデザインが秀逸だと思う。 真っ暗な絶望の中に浮かぶ名言の数々がたまらない。

サイレントヴォイス

技法アンケートや心の声を背景に敷き詰める

効果様々な意見、言葉を可視化する

「広報すもと」の令和4年3月号の表紙がスゴくイイっ。
Desig-winにある必殺技「スモールワールド」(大きなオブジェクトの周りに人を配置する)、「タテヨコスクランブル」(縦組み、横組みで文字を配置する)の混合技みたいに見えるけど、行政の広報誌で住民の声だとか、啓発したいこと、新しい施策の案内とかで「こういう声がある」という表現で使いたい。
ウチの課の担当だと、例えばがん検診の啓発だとかで使えるはず。

ノンデザイナーだからとか諦めずに、地方公務員としては情報を発信する機会は常にあるんだから、しっかりと学び続けたいですね。

今回のワークで集めた1,000例のボードはこちら