Caramelbox「BREATH」30周年の締めくくり、これ観なきゃダメなやつ!

BREATH

のクリスマス公演は25年前から必ず新神戸オリエンタル劇場で幕を開けます。
そして今年は劇団創立30周年のリアルイヤー。そんな年の最後の作品は2003年に公開されたラブ・アクチュアリー」に着想を得たオリジナル作品。
まだまだクリスマスには早い時期ですが、そんな“世界初公開”の初日を楽しんで来ました。

12月。内の劇場に勤める堀江恭子に、高校時代の同級生の赤星一馬から電話がかかってくる。
一馬は「明日のニュースを見てくれ」と言う。翌日、テレビを点けると、そこに一馬が映っていた。一馬は新人作家を対象とした芥山賞を受賞したのだ。それを見て、恭子は高校の卒業式を思い出す。別れ際、一馬は恭子に向かって、「僕が芥山賞を取ったら、結婚してほしい」と言ったのだ。「あいつ、まだ覚えてやがったのか。あれから15年も経ったのに」と呆れる恭子。ところが翌日、一馬が家へ訪ねてきた……。

劇場のスタッフである堀江恭子とその同級生で芥山賞を受賞した赤星一馬のちょっとずれたラブストーリーを軸に、7組の男女の物語が交差します。
ニュースキャスターの柿本光介とその娘・久里子というキャラメルボックスの過去の作品を知る人間にとってはお久しぶりの登場人物も現れて、それぞれの男女の会話がテンポ良く進められます。

それぞれの物語が平行して進むため、序盤は物語の終着点が読めずに心がざわざわとしますが、中盤からそれぞれの物語が入り交じる怒濤の展開で一人一人の思いが一直線に突き刺さり、涙を、笑いを、感動を誘います
群像劇にありがちな一部のストーリーの置き去り感はなく、どの物語もメインストーリーのような満足感で、最後にはなんだか少しだけ元気になってしまうこれぞキャラメルボックスという作品です。

物語の始まりを示すオープニングダンスを彩るのは”夏のバンド”のイメージが強いTUBEの「クリスマスローズ」。
観劇前にYouTubeで聴いて、とてもダンスに向いた曲とは思えなかったのですが、劇場内に大音量で響き、ストップモーションから7組の男女がそれぞれペアでダンスを始めると目が釘付けに。クリスマスツリーを模するかのように全員が三角に並び大きく手を広げると信じられないくらい心に響き、泣きそうになりました。

TUBEもキャラメルボックスと同じく結成30周年になるとのことで、今回こんなコラボが実現したのですが、まさかこんなに素晴らしいとは。

オープニングダンスが終わった瞬間、物語の舞台となる劇場事務所が現れるのですが、その風景に息を飲みます。ダンスとは違った意味でまた泣きそうになってしまう風景。キャラメルボックス30周年のお芝居の舞台としてこれ以上のものはありません。
キャラメルボックスのサポーターならツボに入っちゃう登場人物、展開、台詞もてんこ盛り。

キャラメルボックスは初見という方でも、7組の男女の誰かにグッと入り込んでしまうこと受け合い。

カーテンコール

終演後にはサービス満点の撮影OKタイム。7組の男女と1人の謎の男が順に登場してキュンとくる素敵なポージングで最後まで楽しませてくださいます。

本当に素敵な1か月早めのクリスマス、ありがとうございました。
これ、本当に「見なきゃあかんやつ」です。これからクリスマスに向けて、まだまだ素敵なお芝居に仕上がっていって、東京に行く頃には「ホンマに見なきゃあかんやつ」になっているはず
神戸はこの週末3連休、23日(月・祝)まで。

http://www.caramelbox.com/stage/30th-5/

公演名 Caramelbox 30th Vol.5「BREATH」
公演期間 [神戸]2015年11月19日(木)~23日(月・祝)
[新潟]2015年11月28日(土)・29日(日)
[東京]2015年12月10日(木)~25日(水)
場所 [神戸]新神戸オリエンタル劇場
[新潟]りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場
[東京]サンシャイン劇場
サイト 公演案内 /

ネタバレの世界

まだ観ていない人はご注意のほどを。

やっぱり、感想を書こうと思うと、ネタバレなしで書くのは極めて辛いので、ここからはネタバレ有り(でも、一応配慮はしてみる)で感想をば。

30周年の記念ということもあって、昔からのキャラメルボックスサポーターには溜まらない作品でした。
キャラメルボックスの過去の作品の舞台や登場人物、エピソードがふんだんに散りばめられていて、サポーターなら最初からニヤニヤしてしまいます。

公表されている情報だけでも、例えば、物語の舞台となる劇場が「ブリザードミュージック」のシアタームーンライト
「銀河旋律」の主人公、ニュースキャスターの柿本光介は当然、西川浩幸さんが演じていますし、その娘で「広くてすてきな宇宙じゃないか」に登場する久里子も登場します。その彼氏の名字は「長坂」で、「ケンジ先生」で、久里子が亡くなった夫の名字と言っていました。

他にも7組の男女とは違って、冬になると北の大地から栄養を蓄えてやってくる菅野良一さんが演じる謎の男はあの方ですし、畑中智行さんが演じる小林不二雄の祖父は手先が器用なあの方。さらには「ハリマ」や、劇場で演じられているお芝居はちゃんと劇団事務所のど真ん中に大きなポスターがあって良く知っているあの作品です。

そんなエピソードが出る度に本当に楽しくて、自宅に帰ってからその作品のDVDを摘まみ食いして見直しちゃいました。

観に行った神戸の初日は今年の新人山崎雄也さん、大滝真実さん、石森美咲さんが初舞台でした。……いや、なんかね、初舞台とは思えないくらい素敵な3人でした。
山崎雄也さんは体のでかさだけでなく落ち着いた雰囲気で伊藤ひろみさんとの対比が本当に面白かったですし、大滝真実さん演じる希乃は物凄く難しいヒロインの一人だと思うんですが、その儚さが観ている側にズンと伝わってくる演技でした。久里子を演じる石森美咲さんは、可愛かったぁ。久里子って前田綾さんが演じる時の「デカい」久里子と、デカくなる前の小さい久里子がいる(どこであれ成長するんだろう……)んですが、小さい久里子のイメージに合う25歳の久里子でした。

本当に久しぶりに生でお芝居を拝見することができた伊藤ひろみさん……昔のキャラメルボックスというと、伊藤さんの少年に惚れたんですが、今回のおばあさんは何というか物凄く大好きです。ベテランの俳優さんも坂口理恵さんは我が儘に見える奥様を、菅野良一さんは登場するだけで笑いを、畑中智行さんはあの超絶技法を……本当に物語を楽しむだけでなく、観る側が今までキャラメルボックスに接してきた時間を役者さんの演技で揺さぶってもらって、素敵なプレゼントをもらった気分になりました。

本当に楽しかったなぁ……

キャラメルボックス