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タイムトラベルな日々:ジャック・フィニィ「愛の手紙」

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な日々。
前回の「クロノス・ジョウンターの伝説」の吹原和彦のように、相手への思いがたっぷり詰まった作品を紹介しようと思ったら、この作品を思い出しました。

ジャック・フィニィの「愛の手紙」

ジャック・フィニィでタイムトラベル物と言えば、代表作の長編小説「ふりだしに戻る」なんですが、「ゲイルズバーグの春を愛す」という作品集に収録されているこの短編を個人的には一押しして紹介したいと思います。

1962年のニューヨーク、ブルックリン。
24歳のジェイクは、古道具屋で買ってきた机の隠し抽斗に一通の古い手紙が隠されていることに気づく。
手紙は80年ほど前、ヴィクトリア朝期の乙女が恋に悩みながら思い人に書いたラブレターだった。
ジェイクは古い時代からの贈り物に驚きながら、を取る。
彼女に向けた励ましの手紙を書いて、街で一番古い郵便局のポストへ……

「愛の手紙」でタイムトラベルをするのはジェイクでも、80年前にブルックリンに暮らす彼女でもありません。
ジェイクが彼女にあてた手紙、それが時間の流れを超越して彼女に配達されてしまいます。

彼女は驚き、ジェイクに手紙をしたため2つめの隠し抽斗に。
ジェイクはその手紙を見つけ、そして彼女にもう一度手紙を送ります。

ジェイクから彼女へは街で一番古い郵便局を通じて手紙が届けられますが、彼女からジェイクに手紙を送る手段は、彼女が使っているその机のみ。
隠し抽斗は3つしかありません。

最後の隠し抽斗、彼女はジェイクに何を伝えようとするのか……

この最後の”手紙”が意外でありながら、素敵な余韻を残す物語になっています。
二人の間に80年という長い時間に隔てられているだけに、ラストの切なさはたまりません。

手紙が時を超えるというアイデアは、その後、韓国の「イルマーレ」や東野圭吾さんの「ナミヤ雑貨店の奇蹟」などでも用いられています。

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=FfOy4LAXx-I[/youtube]

……どちらの作品も素敵なので、「愛の手紙」を読んで「いいな」と思った方にならお薦めできる作品です。

「愛の手紙」を読み終えた人は、本を閉じて、もう一度「ゲイルズグのを愛す」の本を眺めてみてください。

そこには……

この仕掛けだけで、ワタクシ、泣きそうになります。